このところWeb上で、オリンパスの二桁機、E-30の発表の噂が流れている。早ければ11月5日にも発表となる見込みだ。発売は、当初来年早々(2009年第1四半期)とアナウンスされていたが、どうやら年内発売にこぎ着けたようだ。噂では、12月20日。
スペックはE-3同等といわれ、フリーアングル液晶モニター、11点全点クロスセンサーのAF機能、最大約5段分のボディ内手ブレ補正機構などが搭載される。フォトキナ2008ですでにモックアップも展示されており、ボディ形状は、E-3に似ている。
今秋は、ニコンからD700、ソニーからα900が発売され、今月下旬には、キャノンからEOS 5DMark IIがリリースされる。フルサイズ撮像素子搭載機がいよいよ身近な存在になってきた。D700のカタログの見開き写真は、なかなかのものだ。感度ISO3600での撮影にもかかわらずノイズが感じられない。まったくデジタル臭さがない。自然だ。これとD300のカタログ掲載の写真とを比べると、D-300の方は、明らかに見劣りする。
D700は、D3と共通のCMOSセンサーを搭載で、1210万画素。α900は、2460万画素、EOS 5DMark IIは、2110万画素。ニコン以外は、ソニー、キヤノン共に、2000万画素を上回る高スペックだ。この3機の画素数を比べたとき、あえて、画素数を高めなかったニコンのD700に興味を持った。
D700は、フルサイズ機にもかかわらず1200万画素。ここがおもしろい。1200万画素と言えば、いまやAPSはおろか、フォーサーズ、1/1.8サイズ、あるいは一番小さな1/2.5サイズの撮像素子でも、1000万画素以上のスペックを誇る。しかし、写りは雲泥の差だ。
以前から思っていたことだが、1/2.5サイズや1/1.8サイズのコンパクトデジカメにはだんだん興味が失せてきた。一言でいえば、どれも一緒! 写りが!。へえー、パナもリコーもキヤノンもか? そう、そのとおり。リコーのGRデジタルだって、GX200でも、ルミックスのLX3でも所詮写りはそんなに変わらない。まあ、この辺のデジカメは、軽量コンパクトでいつもカバンに入れておけるのが最大の取り柄であって、それ以上のものを期待してもだめ。写りに過度な期待は禁物だ。それがわかった上で、1台選ぶとすれば、28mm単焦点ではGRデジタル、ズームなら実売2万円程度のもので十分(例えばOptioA40など)。このあたりのカメラは、1台持てば十分だ。ここ3〜4年で旧製品も新製品も写りはほとんど変わりませんよ!というのが、ぼくの解答。こんな小さな撮像素子に、1000万以上の画素数を持たせても全く意味がないっていうこと。本当に写りのクォリティを追求するなら、600〜800万程度の画素数で十分であって、600万画素以降のスペックアップは、ユーザーにとってはそれ程ありがたいことではない。
話を、D700に戻すと、この機種の偉いところは、1200万画素に押さえたこと。だからこそ、ぼくは興味を持った。フルサイズで1200万画素だから、1画素あたりの受光量は当然格段に大きいわけで、だからこそダイナミックレンジの広々とした階調豊かな写真が撮れるわけだ。おまけに、ISO800はおろか1600、さらには3200まであげても持ちこたえられる写りが実現した。撮像素子は、サイズが大きくなればなるほど、画素ごとの感度のバラツキが発生し、おまけにノイズ対策もより一層シビアになってくるから、1画素あたりの受光量をうんと多くしておく方が、安定した画像が得られるということ。その余裕のフルサイズ1200万画素のサンプル画像を等倍でディスプレイ上でみれば、その美しさに唖然とする。ああ、やっぱり画素数ではない。画素数で選ぶな!っていうこと。
たとえば、話をフォーサーズに置き換えれば、初代E-1は500万画素。その次に発売されたE-300は800万画素。これら初期モデルと現行モデルとの写りを比べてみても、初期モデルの写りが劣ることはほとんどない。これら二機種は、撮像素子がコダック製ということもあり、色のコクというか、微妙な色合いが実に豊かに表現される。深みのある色が出るということ。このあたりは実際に使ってみないとわからないが、他社製のデジタル一眼レフと比べると、まず写し出される色合いの自然さに気がつくはずだ。フォーサーズにおいても、この先やたら画素数を上げないことを願う。
高感度撮影で、D3やD700に勝る機種を探すことは今のところむずかしい。フルサイズに比べるとフォーサーズは高感度撮影において明らかに不利だ。では、フォーサーズの利点は? 実は、フォーサーズの利点というのは、ボディ単体だけで考えてもあまり見あたらない。誰でも容易に思いつく小型軽量ぐらいが利点だといえる。もっと他に利点は?
このことを考えるときに、重要なことはフォーサーズをフォーサーズシステムとして考えること。つまりボディだけでなくレンズも含めてこそ初めてその利点がわかってくる。フォーサーズの魅力はレンズにあり!。デジタルに適した高性能レンズが、他社より安価で入手できる。
D700のカタログをみて、正直この機種がほしくなった。でも、購入には至らない。理由は、レンズだ。D700を選んだときに最も困るのはレンズだ。ニコンは、このところDX系のレンズを精力的にリリースしてきたが、フルサイズのデジタル対応版についてはまだまだ未対応。フィルム時代のものが大半だ。D700レンズキットには、AF-S VR Zoom-Nikkor ED 24-120mm F3.5-5.6G(IF)が採用されたが、このレンズは、2003年に発売されたもの。ニコンの場合は、超音波モーターとVR搭載が必須だから、選択肢はきわめて少ない。今のところ標準ズームで、価格、重量ともに手頃なものは、結局上記のレンズになってしまう。だが、このレンズは、フォーサーズの同様のレンズに比べるとどうしても見劣りする。ズームレンズ特有の何か一枚ベールをかぶったような写りが気になる。標準ズームで今のところ手頃なものがないとなると、次期の新製品を待つしかない。
それに比べフォーサーズのレンズ群は充実している。まず、標準ズームとして、これまで自分のズーム嫌いを一掃してくれた名レンズ、ZD 14-54mm F2.8-3.5。E-1発売と同時に標準ズームとしてリリースされたものだが、今でも第一級の写りだと思う。広角側の歪曲収差の少なさは特筆もの。シャープでコントラスト豊かな写りは、単焦点レンズと遜色ない写りをみせる。超音波モーター搭載ではないが、それに準ずるなめらかでスピーディーなフォーカス性能。しかもF/2.8〜3.5の明るさ。しかも、435gで防塵防滴機構装備。フォーサーズシステムの価値を決定づけた一本だ。今では実売5万円だから超お買い得。
実は、E-30の発売にあわせてこの標準ズームのヴァージョンアップ版が同時発売されるらしい。おそらく超音波モーター搭載とコントラストAF対応が加わるものと思われる。他にも、フォーサーズには低価格で高性能なレンズがいっぱいある。たとえば望遠ズームでは、ズイコーデジタル ED 70-300mm F4.0-5.6。このレンズ、35mm判換算で600mmまでの超望遠域を持ちながら、615gの軽量モデル。3枚の EDレンズを使用し、等倍相当のテレマクロ撮影も可能。これで実売3万3千円程度。フルサイズで望遠600mm域となれば、相当な重量で高価格となってしまう。
広角ズームでは、ついこの間10/25に発売された、ED 9-18mm F4.0-5.6。35mm換算で18mmから36mmまでの超広角ズームだ。これまた超広角域においても歪曲収差が十分に補正されている。しかも重量は280g。こんなに軽量な超広角ズームはおそらく初めてだろう。フォーサーズだから出来ること。実はこのレンズ、最新技術が導入されている。DSA(デュアル・スーパー非球面)レンズの採用により、超小型、軽量設計が可能になった。超広角の世界をここまで身近にしたか!という戦略的なレンズだ。実売5万円台。
フォーサーズはレンズ設計に最新技術を導入し、交換レンズ群を充実させ、着々とシステム拡張を行ってきた。すべて、デジタル対応の設計で、これまでの概念を覆す名レンズを生み出している。このことが、フォーサーズを選ぶ一番の理由だ。フォーサーズの弱点である撮像素子のコンパクトさを逆手にとって、レンズ設計に革新性をもたらせ、ボディとレンズとの組み合わせにおいて独自のバランスを追求していることがフォーサーズの魅力だ。画素数は、どのモデルも、もはや1000万画素を超えた。いまや写りはレンズ次第だといえる。歪曲収差は後処理で補正可能となっても、決して許されるものではなく、レンズ設計時には極力小さくすべきである。いくらボディが小型軽量になっても、レンズが重くて嵩張り旧態依然としたままでは、システムとしては魅力がなくなる。画像処理技術は今後も進展するだろうが、基本は変わるものではない。やたら画素数を競い合う「画素戦争」もこの辺でそろそろ終わりにしてもらいたい。
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