Murphy:「Djangoくん、気楽にくつろいで聴けるジャズで、何かいい曲ない?」
Django:「そもそもジャズは気軽にくつろげる曲が多いんだけど。気楽っていうけど、どういうときに聴きたいの?」
M:「そうだな。夜、まわりが静まりかえったあと、落ち着いて聴ける曲だね。」
D:「夜に聴く曲か。うーん、いっぱいあるんだけど...、例えば子守唄なんかどう?」
M:「Djangoくん、まじめに答えてくれよ。子どもじゃないんだから。大人が聴く曲だよ。」
D:「そうか、それなら大人が聴く子守唄はどう?」
M:「大人の子守唄? ジャズでそんなのあるの?」
D:「あるよ。バードランドの子守唄(Lullaby Of Birdland)っていう曲。有名なニューヨークのマンハッタンにあるジャズ・クラブ「バードランド」に由来する曲で、盲目のピアニスト、ジョージ・シアリングが1952年に作った曲だよ。」
M:「誰の演奏がいいの?」
D:「もちろん作曲者自らの演奏したアルバムもいいけど、今回はジャズ・ボーカルのなかから選んでみよう。クリス・コナーという歌手、知ってる?」
M:「いや、知らないな。女性なの?」
D:「そう。クリス・コナー(Chris Connor)という白人女性歌手のアルバムで、「バードランドの子守唄」っていうタイトル(ベツレヘム・レーベル)。Murphyくんもこれまでに、きっと聴いたことあると思うよ。」
M:「そうかな。ところで、クリス・コナーってどんな人?」
D:「白人ジャズ・ボーカルを代表するシンガーの一人で、ジューン・クリスティとならぶ、白人特有の理知的なタイプ。一言でいえば、クールな歌声だね。」
M:「そう。実はジャズ・ボーカルの世界は、あまりよく知らないんだ。でも、これから是非いろんな歌手のアルバムを聴いてみたいと思うんだ。」
D:「それなら、是非クリス・コナーのこのアルバムをおすすめするよ。クールに淡々と歌いながら、よくスイングするし、しつこく粘らず、そのさりげなさがいいね。彼女は、スタン・ケントン楽団で認められただけあって、本当の意味での実力シンガーだ。このアルバムを録音したのは、確か1953〜54年だと思うけど、当時彼女は20代の半ばで、非常に安定しており、完成度が高いね。ボクは、10インチ盤の復刻LPを持っているんだけど、今入手できるCDだと1枚にまとめられていて、ピアノ・トリオ、オーケストラ、クインテットのさまざまな伴奏の曲が入っている。彼女の初期の名盤だね。」
◇◇◇
他に、「星影のステラ」、「スプリング・イズ・ヒア」、「風と共に去りぬ」などの名曲が入っている。このアルバムは現在東芝EMIよりリリースされている。
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