Django:「今回はとっておきのピアノソロを紹介しよう。以前にロンカーターとジムホールのデュオアルバムを紹介したけど、その時のレーベル名を覚えてる?」
Murphy:「確か、コンコード(Concord)レーベルだったね。」
D:「そう。そのコンコードレーベルが1989年から、カリフォルニアのバークレイにある、メイベック・リサイタル・ホール(Maybeck Recital Hall)で、ユニークなソロピアノコンサートを企画し、ライブレコーディングを行ってきた。このホールはライナーノートによると、定員50〜60名ぐらいの小さなホールで、アットホームな雰囲気のなかで、往年の名ピアニストのソロコンサートをすでに40回以上開催している。」
M:「へえ、それはユニークだね。これまでどんなピアニストが登場したの?」
D:「70年代からコンコードレーベルでおなじみのデイブ・マッケンナを始め、ケニー・バロンやバリー・ハリス、それにエリス・ラーキンスなども登場した。今回はその中から、第16回のコンサートで1991年11月11日に収録された、大御所ハンク・ジョーンズを採り上げてみたい。」
M:「ハンク・ジョーンズといえば、この間、ロバータ・ガンバリーニの最新アルバムで歌伴をやってた人だね。」
D:「そのとおり。ラッシュ・ライフというアルバムだった。ハンク・ジョーンズ(Hank Jones)は、古くて新しい大人のジャズといった感じで、決して派手ではないが、実に味のある渋いピアノを聴かせる人で、今となっては貴重な存在だ。ボクはこのアルバムを発売と同時に買ったのだけど、期待どおりの演奏で、久々にくつろいで楽しむことができた。以来、このCDは、まわりが静まり返った夜によくかけるんだけど、聴けば聴くほど味の出るアルバムで、もう10数年飽きずに聴き続けている。
全部で17曲収録されており、スタンダード曲を中心に、どの曲も3分〜5分程度の時間にまとめられている。こういったソロアルバムは、案外少なく、コンコードのこのシリーズは今となっては実に貴重な記録だ。セロニアス・モンクの作品が2曲収録されており、ブルー・モンク(Blue Monk)とラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)という名曲中の名曲が、ハンク・ジョーンズならではの、さらっとした演奏で楽しめる。あまり重くならず、かといって軽快に流れすぎず、中庸を得た演奏は絶品で、先ほども言ったように、大人のジャズをたっぷりと聴かせてくれる。リラックスしてさりげなく味のあるジャズを聴きたい人に最適だね。」
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Live at Maybeck Recital Hall, Vol. 16 : Hank Jones 1991
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