2007年2月にアダム・ロジャース(Adam Rogers)の最新作Time And The Infiniteがリリースされた。Criss Cross Jazz レーベルからの4作目で、今回はギタートリオによる演奏。使用ギターはギブソンのES-335とともにナイロン弦のクラシックギターも用いている。オリジナル曲が4曲で、他にスタンダード曲が5曲。そのなかでYoumansが1929年に作曲したWithout A Songが収録されているが、本アルバム中ハイライトともいえる名演だ。この曲は、ソニー・ロリンズが1962年にカムバック第一作としてRCAに吹き込んだ橋(The Bridge)というアルバムに収録されており、今回のアダム・ロジャースは、当時のソニーロリンズの演奏を踏まえて、彼ならではの新しい解釈で、見事な演奏を披露している。
当時のソニー・ロリンズのバンドには、ジム・ホールが参加しており、アダム・ロジャースのギターからは、ジム・ホールの影響もみられる。ライナーノートによると、2005年のジム・ホールの誕生日にヴィレッジ・ヴァンガードにおいて、共演している。
アダム・ロジャースは、1965年NY生まれ。ビバップにルーツをもつ、いわゆるジャズギターの正統的な奏法を消化した上で、大学時代にクラシックギターも勉強している。ジム・ホールやパット・メセニーらのコンテンポラリーなジャズギター・スタイルと、フィンガースタイルでのクラシカルなアプローチの両方を持ち合わせており、曲ごとにそれぞれの奏法を使い分けている。特筆すべき点は、彼の自在なアドリブフレーズが、決して無機的にならず、のびのびと歌うように語りかけてくることである。
アダム・ロジャースの演奏を一聴して思うことは、その音楽性の高さであり、おそらくパット・メセニー以来の次世代を担う最有力候補のジャズギタリストであろう。優れたテクニックを披露できるギタリストは他にたくさんいるし、個性的な演奏家も多いが、コンテンポラリーな演奏スタイルで、これだけ説得力を持ったアドリブを展開できる人はそう多くない。(Django)
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Adam Rogers : Time and the Infinite(2007年2月リリース最新録音)
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