コール・ポーター (Cole Porter)の名曲、夜も昼も(Night And Day)は、1932年に作曲された「陽気な離婚(The Gay Divorcée)」のミュージカルナンバー。フランク・シナトラの得意曲で、エラ・フィッツジェラルドやアニタ・オデイなど多くのジャズ歌手に歌われてきた。ベニー・グッドマンのヒット曲でもあり、特にクラリネットに合う曲だ。
モダンジャズ以降、サックス全盛時代になり、ニューオリンズ時代からスイング期にかけて活躍してきたクラリネットは、最近ではその出番がめっきり減ってしまったが、改めて今の時代にクラリネットを聴いてみると、サックスとは違ったそのぬくもりのある響きは、他に代え難い魅力を持っていることが再確認できる。
今改めてクラリネットを聴くなら、その響きの美しさを味わう上で、どうしても最新録音のなかから選びたくなる。実は、一般にはあまり知られていないが、北欧のスウェーデン・ジャズ界の巨匠として、長年クラリネットを演奏してきたプッテ・ウイックマン(Putte Wickman)が2006年の2月に惜しくも亡くなった。その追悼盤としてGazellレーベルから緊急限定発売されたアルバムが、アン・インティメイト・サリュート・トゥー・フランキー(An Intimate Salute to Frankie)というフランク・シナトラに捧げた作品。
このアルバムは、クラリネットとピアノのデュオで全曲演奏されており、クラリネットを味わう上では理想的な編成であり、彼のラスト・レコーディングとなった貴重な録音である。曲目は全15曲で、スタンダード名曲がズラリ並んでおり、ラストに夜も昼も(Night And Day)が収録されている。プッテ・ウイックマンは、1924年生まれで、スウェーデンの王立アカデミー会員であり、クラシックからモダン・ジャズまでこなし、名実共にスウェーデン音楽界の大御所として活躍してきた人である。
澄み切った透明感のある音色の美しさは、一聴してわかるほどの魅力を持っており、自然で温かみのある演奏は、まさに北欧ならではのものだ。彼の音楽をかけると、クラリネットのふくよかな響きが部屋を包み込み、何とも言えない落ちついた気分になる。(Django)
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