Django:「Murphyくん、今回はいきなりボクの好きな曲から話をはじめよう。」
Murphy:「Djangoくんの好きな曲か。 ボクも知っている曲かなあ?」
D:「「四月の思い出(I'll Remember April)」という曲。どう? 知っている?」
M:「さあ、知らないね。聴けばわかるかな?」
D:「おそらく。この曲は、これまで本当に多くのジャズプレーヤーが演奏してきたからね。」
M:「たとえば?」
D:「ビバップの開祖の一人といわれるピアニスト、バド・パウエルが40年代の後半に録音した名盤、バド・パウエルの芸術(THE BUD POWELL TRIO)の1曲目に入れているし、ソニー・クラークもブルーノート・レーベルに吹き込んでいる(Sonny Clark Trio(1957)/Blue Note)。他に、それこそ、もう、ほとんどのジャズ演奏家がこの曲を好んで採り上げているよ。まさにジャズの名曲だね。」
M:「そうか。誰の作曲なの?」
D:「ジーン・デ・ポール&パット・ジョンストン(G.D.Paul & P.Johnston)。もともとは確か映画音楽だったと思うけど。」
M:「テンポは速いの?」
D:「そうだね。どちらかと言えば速いテンポで演奏する人の方が多いかな。でもソニー・クラークなんかはスローテンポだね。」
M:「おすすめの演奏は?」
D:「この曲は名演奏が多いから、1つだけに絞り込むのはむずかしいんだけど...。」
M:「どちらかといえば、聴きやすくて肩のこらない演奏がいいな。」
D:「それなら.....、新しいアルバムから選んでみようか?」
M:「新しいって、最新?」
D:「そう。2007年の2月21日発売の新譜で、スタンダードソングばかり、昨年の秋に何と50曲も一気に録音したピアノトリオがいるんだ。」
M:「へえー、そんなに一気に録音できるの?」
D:「4日間で50曲。恐るべきペースだね。マイルス・デイビスの50年代のマラソン・セッションに匹敵するかな。」
M:「そんなに一気に録音したら、演奏内容は大丈夫なの?」
D:「うん、それなりにね。エディ・ヒギンズという人のピアノトリオで、アルバム名は、「素敵なロマンス(A Fine Romance)」というタイトル。」
M:「聴いたことないなあ。若い人なの?」
D:「年配の人で、もう75歳だよ。50年代の後半から60年代にかけて、シカゴのジャズクラブで演奏していたらしい。97年からヴィーナスレコードで最新録音のアルバムがリリースされて以来、有名になり、今では日本の多くのジャズファンに知られているよ。」
M:「どんな演奏?」
D:「そうだね。どちらかといえばイージーリスニング的で、肩のこらない聴きやすい演奏だ。でもそれなりに味わいもあるよ。BGMとして気軽に聴くのに最適だね。Murphyくんの好みだと思うけど。でも、もし、この曲のビバップ期の歴史的名演を、というのであれば、ぜひバド・パウエルを。これはもうすごい演奏だから。いつかは是非聴いてほしいな、決定版だから。パウエルのピアノは壮絶だよ。ボクはこちらの方がもちろん好きなんだけど。」
M:「わかった。バド・パウエルはいつかは聴いてみるよ。ところで、エディ・ヒギンズトリオのアルバムには50曲全部入っているの?」
D:「まさか。1枚のCDに12〜13曲程度しか入らないよ。この企画は、シリーズ四部作で、CDが四回にわけてこれから順次リリースされるということだ。名曲ぞろいだし、Murphyくん、これでスタンダード曲を覚えたら。」
M:「そうか。それを聴いて自分の好きな曲を発見するという方法もあるね。」
D:「うん。でも、Murphyくん、バド・パウエル、覚えといてね。」
◇◇◇
素敵なロマンス エディ・ヒギンズ・トリオ Venus Records 2007.2.21
エディ・ヒギンズ Eddie Higgins(p)
ジェイ・レオンハート Jay Leonhart(b)
マーク・テイラー Mark Taylor(ds)
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