初めて聴いたジャズはMJQだった。親しみやすくて聴きやすいし、それでいてJazzの香りがたっぷり漂い、スインギーなJazzの王様は今でもMJQだと思う。Jazzの初心者にも安心してオススメできるし、MJQを聴けば、ほとんどの人にJazzの魅力がわかってもらえる。
でも、MJQは管楽器が入っていない。サックスやトランペットの入っていないジャズなんて!、と思う人も多いだろう。確かにJazzは、管楽器が入らないと何か物足りない気持ちになることもある。
もし、MJQにホーン奏者が加わればどんなに楽しい演奏になるんだろうと、以前から何度も思ったことがある。トランペットとサックスが入れば、俄然MJQはカラフルになり、パワフルにもなる。では、MJQに誰が加わればよいか?
サックスならパーカーだろう。でも、MJQが活躍し始めた頃は、既にパーカーは晩年を迎えていた。50年代の半ばのMJQに加わるサックス奏者は、もっと元気なプレイヤーの方がいいだろう。となると、パーカーのような演奏のできる人、つまりパーカーの代打を起用すればよいのではないか。
パーカーの代打の切り札は、間違いなくソニー・スティットだろう。次にトランペットは誰がよいか? これは、ガレスピーで決まりだ。スティットとガレスピーなら、バリバリのビバップが炸裂する。でもこの二人が入れば、MJQのオリジナルメンバーのなかからミルト・ジャクソンは一時的に退いてもらおう。
ディジー・ガレスピーのトランペット、ソニー・スティットのアルトサックス、ジョン・ルイスのピアノ、パーシー・ヒースのベースとくれば、これは理想のビバップメンバーではないか? まさに夢の共演だ。ここで重要なのは、ジョン・ルイスの存在。これが肝になる。なぜかというと、静と動のバランスがMJQの最も優れた点であり、いつもはミルト・ジャクソンの「動」とジョン・ルイスの「静」の対比が素晴らしく、ここでミルト・ジャクソンが退き新たにホーン奏者二人が加わった場合も、彼ら二人が「動」で、「静」の存在としてジョン・ルイスは決して外すことは出来ないわけだ。
それと、ベースのパーシー・ヒース。この人は地味だけど、決して代わることの出来ない、いわば屋台骨のような存在だ。モダンベースの父、オスカー・ペティフォードとならび50年代に活躍したベーシストといえば、ポール・チェンバースとパーシー・ヒースが筆頭に上げられるが、ベースの音色、音そのものでいえば、パーシー・ヒースのベースの生音の素晴らしさは未だに語り継がれている。
MJQにホーン奏者が加われば? しかもガレスピーとスティットが参加すれば理想だ、といったが、まさにこのメンバー構成のレコードが過去に発売されていた。Verveのノーマン・グランツが1956年にNYで録音した、The Modern Jazz Sextetというタイトルのアルバムだ。メンバーは、この4人以外に、ギターのスケーター・ベスト、ドラムスはオリジナルメンバーと入れ替わり、チャーリー・パシップが参加。快調の飛ばすガレスピーとスティットの演奏は会心の出来で、この二人とジョン・ルイスのピアノとの対比が素晴らしい。演奏内容は、まさしくビバップだ。そして、バラードメドレーも入っている。ここでのジョン・ルイスのピアノは、彼以外の他のピアニストでは決して真似出来ない、音数が少ない中での珠玉のアドリブを披露する。 ーDjango
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