カメラっていうのは、パッと見た瞬間、思わずほしくなるものと、最初はなにも思わす使っているうちに次第に愛着がわいてくるものとがあるが、ペンタックスOptioA40は後者のほうだ。このデジカメ、いまどき珍しく、ボディーカラーの選択の余地がないんだから困ったものだ。シルバー一色のみ。なんと地味なカメラ! 正直言ってあまり売れそうもない。見てくれがおとなしく、目立たない。そのうえカラーバリエーションもないとなれば、ファッション性を重視する国内市場では、ほとんどの人が見逃してしまう。
■パンフォーカス・モードがいい!
でも、使ってみると、その実力に驚く。とくにスナップショットには最適だ。「パンフォーカス・モード」にセットすると、シャッターレスポンスが素晴らしく速い。往年のレンジファインダー・フィルムカメラを使っているようだ。シャッターを押した瞬間、写るんだから実に快適だ。
それと、もうひとつ「一気押しPF」という機能。あらかじめ、メニュー画面上でこの機能をONにセットしておく。その後は、通常のAFモードの状態で、とっさの場合、いつでもシャッターを一気に押せば瞬時に撮影することができる。ここでもパンフォーカスモードが働くわけだ。シャッターチャンスを逃さない、こんなモードを装備しているA40、まさにスナップショットのために生まれたようなカメラ。
■使い勝手がいい!
このカメラ、撮影者の心理がよくわかっているなあ、と思わせる優れた操作性がまだまだ他にもある。ひとつは、グリーンボタン。このボタンは、液晶画面の右下に位置しているが、自分の好みに合わせてのカスタム化が可能。つまり自分がよく使う機能を登録できるのだ。これでいつでも露出補正が簡単に行える。
あと、撮影モードは、プログラム、シャッター優先、マニュアルの3つのモードのなかから選べるが、絞り優先モードはない。だいたい今時、焦点距離のきわめて短いコンパクトデジカメで絞り優先なんて使う必要はまったくないわけで、きわめて正しい選択だ。コンパクトデジカメで機動性、速写性を追求するというのが、あるべき一つの目標だと思うが、市販のコンパクトデジカメで案外疎かにされていることが多い。その点、A40は、まさにこのことをよく心得ている。
■本気の手ぶれ補正機能!
今のデジカメ、猫も杓子も「手ぶれ補正機能」を装備している。でも、実際にどの位有効かは、機種によって様々。そんななかで、A40のShake Reductionは本格的だ。おそらくコンパクトデジカメの中では最強の一つだろう。過信は禁物だが、A40で写した場合、撮影後モニター上で1:1画面で確認したとき、大半が「合格!」だから、かなり強力だ。ちなみにペンタックスはCCD制御方式を採用。
■描画性能がいい!
A40の写りは、初めて使った時から気に入っている。いわゆるデジタル臭さが感じられず、自然な写りだ。ずっとフィルムカメラを使用してきたものにとって、あのデジタル臭さだけは未だに好きになれない。でも、A40は、ナチュラルだから、フィルムカメラの気分で写せる。コントラストと階調重視の立体感のある写りがこのカメラの持ち味だと、自分では思っている。
過度な画像処理の結果、潤いと温もりがなくなり、高解像だがガサついた写り、立体感に欠け平板でヌメッとした力のない写り、薄らボケの頼りないもの、強引にシャープネスをかけまくった画像などをみると、「写真」からどんどん遠のいていく感じがするけれど、そういったなかで、A40は、「ふつう」の写りが得られる貴重なカメラだと思う。「写真らしい!」と感じる写り。だから力を抜いて普段着の撮影ができる。目にとまった一瞬の光景を記録してくれる。しかも自分のほしかったイメージを。本機は、一般コンパクトデジカメに採用される1/2.5インチより一回り大きな1/1.7インチのCCDサイズが搭載されているが、階調表現の点ではずっと有利だということが、実感できる。
たぶん、A40はレンズがなかなかの優れものなのではないかと思っている。高画質とスリム&コンパクトは矛盾する。このレンズを完全に沈胴するために、「スライディング・レンズ・システム」という独自のレンズ収納機構を導入している。この機能は、メーカーの解説によると、「レンズの収納時に、レンズブロックをスライドさせて上下2段に収納する」というから驚いてしまう。よくここまでやったね!と褒めたくなる。地味で隠れた技術だけど、間違いなく画質に貢献している。最近では終始一貫レンズが飛び出さない、屈曲式レンズ構成を採用した機種も多いが、いまのところ自分の好みの写りではない。
そういえば、かつてフィルムカメラ時代、国産レンズと比べて、ライカやツァイス、フォクトレンダーなどのドイツレンズの写りが余りにも違っているのに驚き、立体感のある階調豊かなその描写力に魅せられたものであるが、大げさにいえば、そういった目で見たときに、A40はどちらかといえばそちらのグループに少し近い写りではないかとひそかに思っている。
さて、欠点は? ああ! 歪曲収差がやはり...。でも、この点は今のコンパクトデジカメはもとよりデジタル一眼レフの標準ズームに至るまで、ほとんどのレンズがそうだから、A40だけを責めるわけにはいかない。まあ、他メーカのものと比較すればまだまだ少ない方だけど...。これで、ワイド側の歪曲収差がもう少し軽減されれば、究極のスナップショットカメラにさらに近づく。
あと、気になる点は? レンズが7.9 mm 〜 23.7 mm( 35ミリフィルム換算 37 〜111 mm相当)だから、ワイド側が不十分だって? でも、ぼくはそう思わない。日常使いに37mmは最適だ。37〜38mmは、被写体が遠すぎず近すぎず、ワイド感が決して誇張されない、実に自然な写りだと思う。つまり、スナップにぴったりの画角だということ。へたに28mm搭載機を使えば、あまり日頃ズーム操作をしないから全部の写真が28mm特有の、ああワイドだ!という写真になりそうだ。もちろん28mmはそれなりに効果的な使い方ができるんだけど、ちょっと強調されてしまう点が、普段使いでは少し気になる。自分では、37mmとともに、もう少しワイドな画角がほしいときには28mmより32mmぐらいがちょうどいい。
ただ、ボディーカラーだけは、選択の余地を与えてほしかった。できればブラック仕様を。黒とシルバーの選択だけは、昔からどのカメラにもあったのだから。あと、液晶ディスプレイは、このままのサイズでよい(2.5インチ)。3インチはぼくには大きすぎる。だいたいディスプレイなんて目印程度であまり詳しく見ないから。液晶ディスプレイに遠慮して、操作ボタンが隅の方に追いやられたものや、ボタンに代わるタッチパネルタイプが最近増えているが、使い勝手という点ではどうだろう。日常のスナップショットでは、ボタンを押す方が確実だ。気持ちもよい。一種のリズム感かな。液晶ディスプレイは大きければよいというものではないはず、それよりもバランスが大切だ。2.5インチに留め、その分、操作ボタンの配置に余裕を持たせている点とボタンの感触のよさがA40の隠れた使いやすさだと思う。
■総合評価をしてみたら!
スナップショット度:★★★★★ (速写性よし、使える手ぶれ補正機能)
描画性能:★★★★ (歪曲収差がなけれけばほぼ満点なんだけど)
操作性:★★★★ (わかりやすいMENUとボタン操作の手触り感がいい)
価格:★★★★★ (この写りと機能で実売3万円以下は安い)
デザイン:★★★ (ブラックモデルがほしい)
※実写例は、murphy's homepage のSnapshot Vol.28をご覧ください。すべてA40で撮影したものです。
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