前回、E-1の写りはいまだに魅力的だと述べた。その理由は、E-1の持つ微妙な階調表現にある。ダイナミックレンジが広く階調表現が豊かなE-1は、悪天候や撮影条件の悪いときにその差が歴然と現れる。例え解像度が500万画素であっても、階調表現が優れていれば大伸ばしにも耐えられる。これまでの経験ではA4サイズはおろかA3サイズでも全く問題がない。
では、このE-1のもつ階調表現の豊かさはどこからきているのか。ここで、E-1のカタログを取り出して復習すると、ある説明文に出会う。CCDの解説だ。E-1の撮像素子はフルフレームCCD方式であること。このCCDがE-1の写りを左右していることは間違いない。
デジタルカメラの撮像素子は、いくつかの種類がある。まず、CCDとCMOSに分かれる。そしてCCDにもいくつかの方式がある。CCDのなかで一番多いのはインタートランスファー方式(IT-CCD)。それに対しE-1はフレームトランスファー方式のひとつ(FT-CCD)であるフルフレームCCDが用いられている。
このフルフレームCCDは、インタートランスファー方式に比べて、電荷を発生する領域を大きく取れるという点が特徴であり、多くの光を照射することができるため、ダイナミックレンジが大きいCCDを作成することが可能である。その結果、インタートランスファー方式と比較すると微妙な階調を再現するのに適したCCDということになる。なるほど、E-1はこのCCDを採用することにより独自の階調豊かな写りを可能としていたのか。但し、フレームトランスファー方式のCCDは、スミアの発生を押さえるために、高精度なシャッターを装備しなければならず、高性能なデジタルカメラでないと搭載できないという。
当時のE-1のカタログには、このフルフレームCCDを図解入りで取り上げ、かなり力を入れて解説がなされている。最近はCMOSの搭載機種がかなり増加しているが、以前は、CCDとCMOSを比べた場合、CCDの方がノイズが少なく、CMOSはノイズ量が多いのが弱点だった。E-1開発当時、キャノンはすでにCMOSを採用していたが、オリンパスとしてはノイズの少ないCCDを採用し、しかもAPSサイズよりも一回り小さなフォーサーズ規格でありながら、フルフレームCCD方式により、ダイナミックレンジの大きさを確保しようとしていた。
現在CMOSの開発は飛躍的に高まり、当初のノイズの多さをカバーするための様々な工夫がなされているらしいが、実写撮影画像を見る限り、E-1の写りの良さは、いまだに色あせていない。E-1はフルフレームCCDを採用し、無理せずに豊かな階調表現を可能としているところに素性の良さが感じられる。E-1の自然な描写は、こういったところにも裏付けがあるわけだ。
コメント