2003年秋に発売されたオリンパスE-1。今年の秋で5年目を迎える。すでに製造終了で、2007年11月に登場したE-3にフラグシップの座を譲った。このカメラ、今でもメイン機種として使っている人はいるのだろうか。デジタルの世界は、技術の進展が著しく5年も経つと、スペック上は相当見劣りする。E-1は500万画素。単純に解像度だけみれば、1000万画素を上回る機種が大半となったいま、相当物足りなく感じられる。
では、今の最新機種を経験した眼からみてE-1のボディー性能や写りはどうだろうか? その答えは、「まだまだいけるぞ!」というのが実感。E-1以降の新機種、E-330、E-410、それにE-1の後継機種であるE-3などと比べてみても、見劣りしないどころか、むしろE-1の持つ独自の画質の良さがみえてくる。E-1を使ってきたからこそ、その後の機種に期待を持ち、さらにその上の画質を求めたわけだが、今でも「これならE-1の方がよかったのでは?」と思うことが多い。
もちろん、「E-1の写りがいい」というのは条件つきで言えることだけど...。どういう条件かというと、まず感度について。感度を上げ過ぎないこと(Max400)。E-1が発売された5年ほど前までは、今と違って高感度でのノイズが多く、あまり感度を上げることは実用的でなかった。だから今でもE-1を使うときは、大半がISO100か200で最大400までとしている。もし、ISO800以上の高感度を頻繁に使うユーザーなら間違いなく最新モデルの方がいいだろう。でもボクは、普段からあまり感度を上げて写さないからほとんど不自由なく使っている。ISO100〜200を常用域とした場合、E-1の写りは他の機種に代用できないほど写りの良さを持っている。
その「写りのよさ」って何なんだろう? 500万画素のE-1と1000万画素を上回る最新機種と比較して、まずいえることは、画素数の違いだけで一概に写りの優劣は判断出来ないっていうこと。コンパクトデジカメの1000万画素とE-1とを比べてみるとこの話はものすごくわかりやすい。誰が見てもE-1に軍配が上がる。しかも圧倒的な差で。「ちょっと待て! CCDサイズが違うものを比較するなよ!」という声が聞こえてきそうだ。それなら、同じフォーサーズ規格で比べよう。500万画素のE-1と1000万画素以上のフォーサーズ機と比べてどうか? 答えは、この場合も、単純に500万画素の方が劣るわけではない。「どうして?」
E-1は階調豊かな写りをする。E-1の写りの良さは、一言で言えば「優れた階調表現」である。他のどの機種よりも写りが自然で、デジタル特有の固さが感じられない。銀塩時代から写真を撮り続けてきたものにとって、E-1の写りは、フィルム時代とのギャップが少なく、アナログライクな写りに好感が持てる。E-1の色調はナチュラルで色のりがよい。1000万画素を超える画素数でも、何となくカサカサした潤いのない写りのものや、不自然なシャープネスやノイズ処理が気になるものも見受けられる。E-1はそれとは正反対で、素肌が美しい自然な写りが特徴だ。だから立体感が豊かだ。例えて言えば、ライカのエルマーは解像度というよりもその豊かな階調表現に魅力があるというのに似ている。
E-1の写りの良さは今でも第一級だと思うが、他にも良い点はいくらでもある。まず、ボディの剛性感が高いこと。次にカメラの構えやすさ。三つ目はシャッター音とそのレスポンスの良さ。このあたりは、初代フラグシップ機としての開発者の意気込みが十分に感じられる。思い切ったボディ形状は、賛否両論に分かれたが、何年も使ってみるとそのデザインの良さが少しずつわかってくる。これは、きわめて実用的なデザインだ。カメラを構えて左側のボディ幅が極端にカットされているが、そのお陰で左手はボディの底面からレンズへと回り、カメラをしっかり支えることが出来る。左手でしっかり支え、右手は力を抜いて構える。これがブレない持ち方の基本。だから、E-1に手ぶれ補正がついていなくても別段気にはならない。大切なことは、手ぶれ補正を装備するより前に、ホールディングしやすいぶれにくいボディ形状をデザインすることの方が大切だ。E-1で写すと不思議にブレにくくなる。これが実感だ。
他にE-1の良い点は、液晶ディスプレイ上のメニュ選択で各種設定の操作をするのではなく、ボディに配置されたボタン操作で設定ができること。E-1独自の設定ボタンの配置形状が、あまりにも前例がなかったため当初使いにくいと非難されたが、長く使えば、E-1のような設定ボタンが分散型のレイアウトの方が、背面に一列にすっきり並んだものより誤操作が少なく、はるかに使いやすい。
ボディ背面の液晶ディスプレイは、1.8型だからお話にならないくらい小さい。最新機種しか知らない人ならこれを見て驚くだろう。でも、ボクは、デジタルカメラでも撮影後あまりモニターを見ない方なので、サイズはそれほど気にならない。今となっては、かわいらしくも感じる。
フォーカスは? 普段普通に写すにはE-1で十分だ。3点フォーカスはそれほど悪いものではない。通常中央1点のみのフォーカスポイントで写している。これは、慣れの問題だ。レンジファインダーカメラ時代からの習慣だから、あまり測距点が多いと戸惑ってしまう。カメラまかせの選択に頼ったり、何も考えずにただ押すだけになってしまったりして、何となく受け身になるのがいやだ。もちろんE-1はレンズ内モーター方式だから、ボディ内レンズ駆動方式に比べて格段にレスポンスがよく駆動音も気持ちがいい。オートフォーカスはこの点(レスポンスと駆動音)が最も重要だ。
ところで、つい先日、マイクロフォーサーズ規格が発表された。今後が楽しみだ。現時点で一つ言えることは、1/1.8型の4〜5倍の大きさを持つフォーサーズCCDは、今から数年前のE-1発売の段階で、それより大きなAPSサイズと比べても、劣るどころか相当優秀なものであったということ。そういった意味では、フォーサーズにとってE-1がいつの時代にも原点であるわけで、今後、単なるスペック上だけではなく、本当の意味でのE-1を上回る「魅力あるカメラ」を是非開発してほしいものだ。
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