撮影Data:RICOH GXR + S10 24-72mm F2.5-4.4VC
確か1月の下旬あたりに、インターネット上でGXRインタビュー記事が掲載されていたのを、今ふと思い出した。その記事を読みながら画面をスクロールしていったときに、GXRのデザイン案(8種類)が目に飛び込んできた。その中の一番左にレイアウトされていた曲線を多用したCG案(A案)を見た瞬間、思わずこれはマズイ!と思った。もし、今のGXRが、このスタイルを採用していたなら、たぶん自分は入手していなかっただろう。もう一つ、現行のGX200によく似たスタイルのもの(B案)もあった。これもあまりよろしくない。GX200の何が引っかかるのかといえば、レンズ上部の前に出っ張った横長の箱(メーカー名の表示部分)の存在。
GX200のデザインは、上部にフラッシュを埋め込むために、ボックスを作らなければならなかった。このボックス部があるため、コンパクトデジカメにもかかわらず、なんとなく一眼レフを連想させるようなデザインになってしまっている(実際にはペンタプリズムのように盛り上がっていなくてあくまでフラットであるが)。今度のGXRでもフラッシュをGX200のようにレンズの上面中央に配置する案が一度は考えられたのだろう。でも、A案もB案も採用されなかった。そのために、GXRはフラッシュ部の収まりに苦労したと思う。フラッシュ部をどこへ持って行くか? 結果として、ボディ部上面にその存在がわからないようにうまく埋めることができた。ボディ上部の厚みはその分増したが、フラットになった。最終的に一直線で構成されたシンプルな箱形形状を維持することができた。
もう一つ、気になったのは、右手グリップ部とカメラユニット側との関係。カメラユニットをしっかりとホールディングするボディ形状は、シンプルな箱形を維持することになったが、右手グリップ部分との関係をどのようにまとめるか? ここはデザイナーの腕の見せどころだ。F案は、できるだけボディを小さく見せようと、右手グリップ部との接続部分をあえて凹ませて、カメラユニット側とグリップ側が独立してそれらがジョイントしているように見える姿を採用した。しかしこの案もある時点で没になったのだろう。やれやれ、これでGXRは命を取り留めた。
こういった数多くの試作段階を経て、出来上がったのが今のGXR。完成してみると一塊のシンプルな箱形だった。そこにはこれまでのデザインの苦悩など微塵も感じさせないほどの明快さが宿った。素材はマグネシウム合金。剛性感が一層高まった。でも、このデザイン、写真上は実物ほど美しく見えない。損をしている。実際に手に持って眺めたときに、このカメラのよさがはじめて伝わってくるように思える。
コメント