この秋、ソニーの攻勢がすごい。α77、α65、それにミラーレスの真打ち、NEX−7登場! 一方マイクロ・フォーサーズ陣営は、オリンパスがこれまでの集大成ともいえる第三世代に突入。PENシリーズは、上位機PEN(E-P3)以下、PEN Lite、PEN mini、の三段構え。特に、E-P3はどこからみても全く隙を見せない性能で、これまでの弱点であったAFスピードを克服し、AF最速機に変身。デザインは、E-P1からのイメージを踏襲。
レンズ交換式カメラは、交換レンズの充実が要。マイクロ・フォーサーズ陣営は、オリンパス、パナソニック共々、待望の単焦点レンズを次々と発売。望遠45mm/F1.8(35mm換算で90mm)、広角12mm/F2.0(35mm換算で24mm)(以上オリンパス)。パナソニックからは、標準大口径レンズ25mm/F1.4(35mm換算で50mm)。この25mm/F1.4は、LEICA DG SUMMILUXと銘々。これら3つのレンズはただ者ではない。相当気合いの入ったもの。いわば、マイクロ・フォーサーズシステムの評価を決定づける、名レンズとなり得る資格の持ち主だ。これらのレンズがほしいから、マイクロ・フォーサーズシステムを選ぶ、という人が出てきても不思議ではない。
ペンタックスは、Pentax Qを発売し、最小撮像素子1/2.3でQマウントをスタート。10/1よりリコーの傘下に入り、おそらくこのフォーマット以外にも、APSクラスの発売が予想される。
さて、これらミラーレス陣営が成熟しつつあるなかで、ついにニコンが「Nikon 1」なる新レンズマウントシステムを発表。撮像素子に位相差AFを組み込んだという。だが、この撮像素子のサイズは、フォーサーズ(マイクロフォーサーズ)の約半分。その割には、ボディ、レンズとも、マイクロフォーサーズに比べそれほど小さくはない。撮像素子のさらなる縮小化によるメリットは一体どこにあるのか。カメラボディのデザインは本当によく考えた結果なのか? J1はまだしも、V1はどうみてもアンバランスで、精巧さに欠ける。この程度のデザインで「ミニマルデザイン」という言葉を、軽々しく使ってほしくない。「はたして売れるだろうか?」という疑問が残る。
カメラはシステム。撮像素子がフルサイズだと、レンズは肥大化する。むりやりレンズをコンパクト化すると性能にしわ寄せがくる。一方、撮像素子を小さくすれば、レンズ設計の自由度は高まる。しかし、撮像素子はいわばフィルムと同じで、サイズをあまり小さくしすぎると当然写りに影響を及ぼす。だから、レンズ交換式カメラは、撮像素子サイズ、マウント径、フランジバックからくる、ボディサイズ、レンズサイズなどを総合的によく考え、それらのバランスを追求し、熟慮の末、フォーマットを決めなければならない。
そういった観点から、オリンパスとKODAKが、レンズ交換式カメラにおいて35mmフルサイズとAPSフォーマットしかなかった時代に、全く新しいフォーサーズシステムを提唱した。デジタルにおいてこのサイズが最もバランスがよく、デジタル時代に真にふさわしい規格であるという主旨の発表を今でも鮮明に覚えている。そのフォーサーズが、撮像素子のサイズはそのままに、さらなるコンパクト化に挑戦し、マイクロ・フォーサーズ規格を生み出した。
オリンパスは、PENの生みの親である米谷美久氏の思想を継承した、デジタル時代のPENをE-P1と名付けた。E-P1、E-P2、E-P3の一連のPENは、一言で言えば「米谷氏の遺伝子が組み込まれた」デザインである。
3rdジェネレーションとなるE-P3は、これまでのファーサーズからマイクロフォーサーズに至るマウント規格が、いかに適切なサイズで、将来のシステムの発展をよく読んでいたかということを物語る。ようやく、フォーサーズの意味が肌で感じられるようになってきた。
かつて、フォーサーズ発表時には、次にような意見の人がいた。「撮像素子のフォーマットは、大きい方がよく、今は過渡期だから妥協の産物として、小さなサイズが主流になっている。APSもフォーサーズも一過性。いずれフルサイズが主流になったら、そのときにこそデジタルカメラを本格的に活用したい」と。フィルム時代の考えをデジタルカメラにそのまま当てはめた単一思考。しかし、そこには落とし穴があった。
デジタル一眼時代に最も有利なフォーマットは何か。1999年の春に、オリンパスの研究員であった高田勝啓氏に与えられたテーマだった。オリンパスからすれば、E-P3という一言でいえばコンパクト、しかし操作に困るほどの小ささではなく、人間の手の平でちょうどいいサイズだと実感できる操作感とデザインを手に入れた以上、今後はマイクロ・フォーサーズ規格の威力の更なる証明が求められる。それは、今後のさらなるレンズ群の充実であり、パナソニックLEICAシリーズの援軍とともに、ミラーレス戦線で存分に活躍してほしい。
コメント