Django:「マーフィー君、不滅のジャズ名曲の3回目は、少し時代の新しいもので考えているんだけど。」
Murphy:「へえー。でも新しいって、どの程度なの?」
D:「70年代ぐらいをイメージしているんだけど。」
M:「70年代というと、マイルスがビッチェスブリューを出したころだね。この頃からジャズは次第にフュージョンに向かっていったね。今思うとフュージョンは、過渡期のものだったということがよくわかるなあ。80年代に入り、ウィントン・マルサリスが登場したころから再びジャズは4ビートの勢いを取り戻し、往年のスイング感がふたたび出てきたからね。フュージョン期の頃で、不滅のジャズ名曲なんてあるのかな。」
D:「ありますよ。おそらく現在でも多くのライブで演奏されるし、確かにフュージョン期に出たものだけど、他のフュージョンものとは明らかにレベルが違うんだなあ。」
M:「そうか、わかった。ジャンゴ君が思ってるのは。それは、・・・、キース・ジャレットの曲じゃないの?」
D:「残念でした。キースは確かに素晴らしいし、今でも決して色あせない数々の名演奏を残しているんだけど、ここで言うジャズ名曲としては、すぐに思い当たらないんだ。」
M:「確かに、ここで採り上げるのは不滅のジャズ名曲だからね。キースは、彼の全演奏に意味があり、テーマは単なるモチーフにしか過ぎないしね。で、だったら、誰の曲なの?」
D:「作曲者本人以外に、他の演奏家も好んで採り上げ、後世の人たちにまで語りつがれる曲だよ!」
M:「うーん。誰だろう。もったいぶるなよ、そろそろ答えを言ってくれよ。」
D:「では。発表します。この曲は、ジャズ以外の他ジャンルの人からも大変人気の高い曲です。それは、・・・スペイン。」
M:「あ、スペインか。作曲者はチック・コリアだね。ジャンゴ君らしい選曲だね。この曲、ずばり言うと、ジャンゴ的だ!」
○D:「オリジナルは、ピアノ演奏だけど、最近は、ギター演奏がずいぶん多くなったね。先日この曲のギター演奏を聴いた人が、すっかりギターのために作曲されたものと勘違いしていたけど。多分この曲は、不滅の名曲として、後世まで演奏され続けるでしょう。」
◇◇◇
チックコリア作曲の「スペイン」は、彼の最新盤「スーパー・トリオ」にも収録されている。クリスチャン・マクブライドのベース、スティーブ・ガッドのドラムスという最強のリズム陣を率いて、じつにのびのびと自由奔放に弾きまくっている。全曲これまで以上に充実したプレーだ。なお、本アルバムは、先日、スイング・ジャーナル2006年度ジャズ・ディスク大賞の金賞に選ばれた。
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