Django:「エリントンは実に多くの名曲を残しており、これまで選んだ曲は、ほんのわずか。これからもっと採り上げたいと思うけど、誰もが知っている有名曲で、まだ掲載していない曲の一つが、イン・ア・センチメンタルムード(In A Sentimental Mood)。この曲は、デューク・エリントン・オーケストラが1935年にBrunswick labelに吹き込んだヒット曲。その後、ベニー・グッドマンも演奏し有名曲となった。その後、現在に至るまで、実に多くのジャズ・プレイヤーに演奏され、この曲を吹き込んだヴォーカリストも多い。そうしたなかで、この曲の名演をひとつだけ選ぶとすれば、ボクはやはり、エラ・フィッツジェラルドのソングブック・シリーズのなかで吹き込まれたものが忘れられないね。」
Murphy:「ジャズ入門者のボクでも知っている有名曲だね。ゆったりとしたバラードでああジャズだ!と思わせる独特の雰囲気を持っている。それにしても、Djangoくんにソングブック・シリーズを教えてもらって思ったんだけど、エラ・フィッツジェラルドってよくこれだけ多くの曲を歌ってきたものだと感心するね。」
D:「エラのソングブックシリーズは、ジャズヴォーカル界の金字塔ともいえる名作だ。Verveのノーマン・グランツとの出会いにより、前人未到のソングブック・シリーズが出来上がったのだから二人とも凄いね。でも、その中で、ボクが最高傑作だと思っているアルバムは、やはりエリントンのソングブック。これはもう人類の宝と言っても過言ではない。
このアルバムは、エラの伴奏を、エリントン楽団自らが演奏しているからすばらしい。それと、曲ごとに、オーケストラ演奏、コンボ演奏、さらにバーニー・ケッセルのギター一本、あるいはオスカー・ピーターソンのピアノによるシンプルな伴奏も含まれており実に多彩な内容だ。エラとエリントンの引き合わせをノーマン・グランツが企てたのだから、まさに名プロデューサーである。」
M:「なるほど、ノーマングランツだから出来たことか。」
D:「エリントンの曲はいずれエラという第一級の歌手が歌う運命にあったのだ思うと、このソングブック集は感慨深いものがある。実は、エリントンの曲のなかで、ソリチュード(Solitude)は、ピアノかギターのシンプルな伴奏が最もこの歌曲の美しさを発揮すると思っていたんだけど、まさにここでは、バーニー・ケッセルのギター一本による歌伴で実現された。他に、アズール(Azure)と今回採り上げたイン・ア・センチメンタルムード(In A Sentimental Mood)も同様だ。でもギター一本で歌える人なんて、ジャズヴォーカリスト多しといえども、そうはいないわけで、エラはまさに適役といえる。
それと、エリントンの片腕、ビリー・ストレイホーンの名作ラッシュライフ(Lash Life)を、オスカー・ピーターソンとのデュオで吹き込んでいるから、これまた貴重な永久保存版ともいえる演奏だ。」
M:「ぼくもジャズのことが少しわかってきたような気がする。改めて聞くけど、ジャズで最も大事なことはなに?」
D:「歌うということ、どんなアドリブ演奏でも結局は歌うということだと思う。実際、すぐれたジャズの名手は、みんな歌いながら演奏している。」
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