ジャズを聴き始めるのはいつからでも遅くはありません。思ったときがスタート。いつでも気軽に聴けばよいのです。毎日いっぱいのコーヒーを飲むように、一日に一曲ずつジャズを聴けば次第にジャズを聴いているときの心地よさがわかってきます。
現在のCDは、70分以上収録できます。これを一度に聴くのも大変なことです。1950年代の初めまでは、SPレコードといって、1分間に78回転のレコード盤の片面にわずか3分程度しか収録できませんでした。だから演奏もすべて3分程度にまとめられていました。3分というのは短いと思われるかもしれませんが、聴いているとそんなに短く感じません。十分に表現できるだけの時間です。当然その頃は、レコードそのものが今とは違って大変高価だったので、1枚のレコードを何度も繰り返し聴いていた人が多かったようです。チャーリー・パーカーの40年代の演奏なんかは、ダイヤル盤やサヴォイ盤などすべて、3分程度の短い演奏です。50年代に入ると、LPレコードが開発され、最初は10インチ盤が発売されました。この10インチディスクには、片面に3分程度の曲が4曲収録され、両面で8曲ほどだったわけです。その後、12インチ(30センチ)盤になり、片面で約20分まで収録されるようになりました。その後も、80年代までジャズのLPレコードは、両面で40分程度収録されていました。
LP時代には、1枚のLPを取り出して、ターンテーブルにのせ、1回にその片面だけをまとめて聴く人が多かったと思います。当時のジャズ喫茶でもリクエストの時に、あるレコードのA面かB面かを指定していたのです。連続して聴き続けるのは、LP片面程度の20分が一つの単位でした。ところが、CD時代になると、裏表もなく、連続して70分程度聴き続けることになります。これは相当な空き時間がないと無理は話で、ともすれば消化不良を起こしてしまいます。あるいは、BGM的にとりあえず音楽をかけておくということになります。コーヒーも一日に飲み過ぎると飽きがくるように、CDも聴き過ぎに注意しましょう。
初めての方は、SPレコードの時代のように一日一曲3分程度聴かれることをお薦めします。そのかわり、3分間その音楽に集中してください。慣れれば、LPレコード片面の20分程度集中して聴けるようになってきます。そういう習慣を身につけると、次第にジャズの演奏に自分の耳も自然に追従していくようになります。ジャズの本当の楽しさは、クラシック音楽を聴くときと同じように、集中して聴くことです。よく、ジャズはむずかしいと言われますが、それはただ何となく聴いているからです。もちろん、BGM的に聴いてもいっこうに構わないのですが、それとは別に出来れば3分間集中して聴いてください。そうすると、きっとあなたのジャズ体験は徐々にリアルなものになり、もっと楽しくなってきます。そして、いつかジャズライブに接しても、より深く理解でき、これまでと違う感動が沸き起こってくるでしょう。